「今期、入札に何件参加して、何件受注できましたか?」
もしこの質問に即答できないとしたら、貴社の案件管理には改善の余地があるかもしれません。
建設業界では長年、案件情報をExcelや紙で管理してきた会社が多くあります。それ自体はもちろん悪いことではありません。 しかし案件数が増え、担当者が複数の部署にまたがり、工期も長期化するにつれ 「情報がどこにあるのかわからない」 「担当者が退職したら引き継ぎができない」 といった問題が顕在化してくることでしょう。
特に下請けを主体とする建設業界では、公共案件と民間案件で入札のルールが異なっていたり、PQから入札、受注、施工、完工まで管理すべき情報が多岐にわたります。それらを複数の担当者がバラバラに管理していると、経営者が全体像を把握するのは至難の業です。
このような課題を解決するために有効なのが「案件管理ダッシュボード」です。どのようなデータを使い、どのような業務課題を解決できるのか、具体的な活用シーンをイメージしながらご紹介いたします。
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建設会社が直面する5つの管理課題
建設業のDX推進が叫ばれて久しいですが、実際に現場レベルでの管理課題はなかなか解消されません。その背景にある代表的な5つの課題を整理してみましょう。
課題① 入札勝率が把握できていない
「今年度は何件入札に参加して、勝率は何%だったか」を正確に把握している建設会社は意外と少ないものです。入札ごとに担当者が個別にExcelを管理し、全社集計に時間がかかり、月次会議でも感覚的な振り返りで終わってしまいがちです。勝率の傾向を分析できなければ、「どの顧客に注力すべきか」「どの工事種別で競争力があるか」といった戦略的な意思決定ができません。
課題② 工期遅延を早期に発見できない
施工中の案件が遅延していることに気づくのは月次会議の資料を作るタイミング、あるいは顧客からクレームが入ってから、という会社は少なくありません。工程管理は現場担当者の頭の中にあり、経営層への報告は月1回の定例会議のみ、という状態では、早期対応のチャンスを逃し続けることになります。スケジュールの遅れは、コスト増が利益を削るばかりか、長年築き上げた信用を一度に失うリスクさえ孕んでいます。
課題③ 受注残の把握が月遅れになる
受注残(今後完工予定の工事の売上見込み額)は、会社の資金計画や人員計画を立てる上で極めて重要な指標です。しかし、手作業で集計している場合、最新の数字が出るのは月末締め後。リアルタイムで「今この瞬間の受注残はいくらか」を把握するのは一手間かかります。
課題④ 部署間で情報が分断されている
営業部門・積算部門・工事部門・調達購買部門がそれぞれ独自のツールやフォーマットで情報を管理している場合、案件の全体像を把握するには各部署に問い合わせるしかない、という状況が生まれます。案件が複数のステージにまたがるほど、情報の伝達漏れや更新遅れが発生しやすくなります。
課題⑤ 予算対実績の比較ができない
年度初めに売上・粗利予算を設定しても、月次での進捗管理がExcelベースの場合「予算に対して今どの程度達成できているか」をリアルタイムで確認することが難しくなります。年度末に蓋を開けてみたら未達だった、という事態を防ぐためにも日常的な予実管理の仕組みが不可欠です。
上記5つの課題に心当たりはありますか?
1つでも思い当たる節がある場合、案件管理ダッシュボードの導入が大きな改善につながる可能性があります。
次のセクションでは、具体的な解決策をご紹介します。
案件管理ダッシュボードのご紹介
案件管理ダッシュボードでは、社内に散在する案件関連データを一元化し、入札から完工までのプロセス全体を可視化するダッシュボードです。今回ご紹介するダッシュボードは、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールの1つであるTableauを用いて構築しており、複数の視点から案件情報を分析できます。
ダッシュボードの全体像
本ダッシュボードは、大きく3つの画面で構成されています。 年度や担当部署などのフィルターを切り替えるだけで、経営層から担当者レベルまで、それぞれの立場に必要な情報をすぐに取り出せるように設計されています。
案件全体

案件ライフサイクル画面

官民比較画面

ダッシュボード化のメリット
TableauのようなBIツールを用いて判断に必要な数値をダッシュボード化することで、単なる「数字の集計」を超えた分析が可能になります。たとえば、入札勝率を担当部署別・工事種別・顧客区分別に瞬時にドリルダウンしたり、月次の売上進捗を予算と並べてグラフ表示したりといった操作を、プログラミングの知識なしに行うことができます。
また、データを更新するだけで画面が自動的に最新情報に切り替わるため、毎月の資料作成に費やしていた工数を大幅に削減できます。経営判断に必要な情報が、いつでも最新の状態で手元にある環境が実現されます。
活用シーン① 経営管理フェーズ — 売上・粗利・受注残を部署横断で把握
「今月の売上進捗は予算比でどうなっているか。部署ごとに分解して見せてほしい」
こんなリクエストに対し、Excelを手集計することなく、すぐに答えられる環境があるとしたら、経営判断のスピードはどう変わるでしょうか。
受注残をリアルタイムで把握する
受注残(受注済みだがまだ完工していない案件の売上見込み額)は、今後の資金繰りや人員計画の根幹となる指標です。本ダッシュボードでは、月次の進捗データと連動して受注残を自動計算し、サマリー画面の最上部に常に最新の数字を表示します。
手作業集計では月末締め後にしか確認できなかった受注残が、データを更新するだけでリアルタイムに反映されます。「現時点の受注残は約38億円」という数字を経営会議の場でその場で確認し、資金計画や人員配置の議論をすぐに始められるでしょう。

部署別の売上・粗利率を多角的に分析する
部署ごとの売上内訳をひと目で把握できるツリーマップや月別の売上推移グラフ、売上規模と粗利率の関係を部署別に示した散布図などを活用すると、「売上は大きいが粗利率が低い部署」「小規模でも高収益を上げている部署」といった傾向を視覚的に発見できます。
これにより、「工事部の売上は高いが、営業部と比べると粗利率に少し差がある。原価構造を見直す必要があるか」といった議論を、データを根拠に行えるようになるのです。

施工中案件の進捗率と出来高を確認する
案件ライフサイクル画面の施工ステージには、進捗率と出来高のKPIが表示されます。施工中の全案件を対象に、計画に対する実績の達成状況を把握でき、「今年度の施工中案件の平均進捗率が80%を超えている」といった全体傾向も瞬時に確認できます。

また、以下の案件詳細一覧と組み合わせて使うことで、工事種別・担当者・顧客ごとの進捗状況を掘り下げることも可能になるのです。

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活用シーン② 営業・入札フェーズ — 勝率と商談状況を一目で把握
入札勝率を多角的に分析する
本ダッシュボードでは、入札勝率を以下の切り口で即座に確認できるようにしました。
- 顧客区分別(公共 vs 民間)
- 担当部署別
- 工事種別(電気工事・空調工事・衛生工事・改修工事)
- 年度別トレンド
たとえば、「民間の改修工事は勝率が高いのに、公共の新築案件は平均の半分以下」という傾向が見えてきた場合、リソース配分や入札戦略を見直す具体的な根拠が生まれます。これは、Excelの集計だけでは気がつきにくいインサイトです。
商談状況で顧客ごとの関係性を把握する
ダッシュボードには「商談状況」という画面があり、顧客ごとに直近の入札結果(◯(落札)/ ×(失注))を月別に一覧表示できます。これにより、「このお客様は3ヶ月連続で落選しているが、最近アプローチできているか?」といった営業活動の抜け漏れを可視化できます。
また、案件ファネル(PQ→入札→受注→施工→完工)の件数推移を見ることで、数ヶ月先の受注見込みを早期に把握し、営業活動の強化タイミングを判断できます。

このダッシュボードに必要なデータは何か
「ダッシュボードを作りたいけれど、うちにはそんなデータがない」とおっしゃる方は多いのですが、実際には多くの建設会社が必要なデータをすでに持っています。本ダッシュボードで使用しているデータは、以下の5種類です。
① 案件マスタ
案件ごとの基本情報をまとめたデータです。案件名・顧客名・顧客区分(公共/民間)・工事種別・受注金額・原価・PQ申請日・入札日・受注日・着工日・完工予定日などが含まれます。多くの会社では、入札台帳やExcelの受注管理表として扱っていることが多い内容です。
② 月次進捗データ
施工中の案件について、月ごとの売上・原価・粗利の実績と累計を記録したデータです。工事の進行基準での売上計上に必要な情報で、月次の出来高報告書などをデータ化したものに相当します。
③ ステージ履歴
各案件がPQ・入札・受注・施工・完工というステージをいつ移行したかの履歴データです。特定のステージにどれだけ時間がかかっているか(たとえば「PQ申請から入札まで平均何日か」)を分析するために使います。
④ 活動ログ
営業訪問・見積提出・契約締結・現場会議といった活動の記録データです。いつ、誰が、どの案件に対して何をしたかを記録します。CRMや日報システムのデータがこれに該当します。
⑤ 予算マスタ
年度・月別の売上予算・粗利予算を管理するデータです。公共/民間別の予算配分と月次の季節配分が含まれます。年度予算書やExcelの予算管理表として既にお持ちの会社がほとんどです。
上記データが全て整っていなくても「できるところから」が大切
上記5つのデータのうち、いくつかは既に何らかの形で社内に存在しているケースがほとんどではないでしょうか。これらを整理・統合するところから支援するのが、私たちのコンサルティングサービスです。「どこから手をつければいいかわからない」という段階からもぜひご相談ください。
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本記事では、下請け建設会社が抱える案件管理の5つの課題と、それをダッシュボードで解決する具体的な方法をご紹介しました。
- 入札勝率・受注残・遅延リスクは、データを整備すればリアルタイムで把握できる
- 必要なデータは、多くの会社がすでに持っている5種類の情報で足りる
- Tableauを活用することで、Excel集計では見えなかった分析インサイトが得られる
建設業のDX推進というと、大規模なシステム導入や多大なコストをイメージされる方もいますが、まずは「今持っているデータを整理して可視化する」ことが最初の一歩です。
月次会議の資料作成に追われる時間を減らし、その時間をデータをもとにした戦略的な議論に使える環境を、私たちは一緒に作っていきます。
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